ヒューリスティック評価とは
ヒューリスティック評価とは、経験豊富なUI/UXのプロが経験則(ヒューリスティックス)に基づいてWebサイトやアプリを評価し、ユーザビリティの課題を発見する手法です。
実際に利用者が操作しながらWebサイトの使いやすさ・わかりやすさ・ストレス要因などを調査する、「定性調査」であり、データに基づいてサイトの状況を分析する「定量調査」ではありません。
また、UXを改善することでビジネス課題の解決を図る「UX戦略」を立てるのに非常に有用なリサーチ手法としても知られています。
ニールセンの10原則
『ニールセンの10原則』とは、ユーザビリティ分析の際に評価軸となるガイドラインとして、ユーザビリティ研究者であるヤコブ・ニールセン氏が発表したものです。
ヒューリスティックスとしてよく知られており、ヒューリスティック評価の指標としても使用されている。
1. システムの状態の可視化 (Visibility of system status)
ユーザーに、システムの状態がわかるように見せることです。
たとえば「検索中のくるくる回るアイコン」や「20%までダウンロード中」など、画面上でシステムが停止したなどと思わせないようにします。
2. 実世界とシステムのマッチング (Match between system and the real world)
Webやアプリの開発者が使用する専門用語は使わず、ユーザーが理解できる言葉を用いて設計を行います。一般的な用語でなくとも、このアプリを利用するユーザーであればわかるといった用語を使用することが好まれます。
3. ユーザーに制御の主導権と自由度を提供 (User control and freedom)
ユーザーが操作を間違えた際に、「1つ前に戻る」、あるいは「最初からやり直す」、「アクションをキャンセルする」ことができるよう設計することが重要です。
4. 一貫性と標準性を保持する (Consistency and standards)
同様の機能を持つものが別の場所で異なるデザイン、言葉で表されるべきではありません。
「戻る」というボタンが、画面ごとに異なるデザイン(<, ←などなど )にならないようにしましょう。
5. エラーの防止(Error prevention)
わかりやすいエラーメッセージを表示することよりもそもそも問題が起こらないように設計することが大切です。また、ある程度のエラーを許容するような設計も大切です。例えば、入力フォームでの全角半角のミスは自動で修正してくれるようにすすることでエラーは起きません。
6. 覚えなくてもわかるデザイン (Recognition rather than recall)
ユーザの記憶に依存するようなデザインをしてはいけません。
システムの状態、前の画面で行った行動、変更した内容などは、画面上で表示するようにします。操作方法は見ただけでわかるようにする必要があります。
7. 柔軟性と効率性 (Flexibility and efficiency of use)
初心者と熟練者の両方を意識してデザインする必要があります。ユーザーのレベルによって、インターフェースを変更して操作性を良くすることが大切です。
たとえばショートカットを設定して初心者と熟練者両方のニーズに合わせるなど、より早くアクションを実行できるような仕組みを持たせられるような柔軟性が必要です。
8. 最小限で無駄のないデザイン (Aesthetic and minimalist design)
デザインは最小限でシンプルにします。不必要な情報や滅多に必要とされない情報を表示するべきではありません。
全体の可読性が悪くなってしまいます。
9. ユーザー自身で認識、診断、回復ができる (Help users recognize, diagnose, and recover from errors)
エラーメッセージはユーザーにわかりやすい平易な言葉で表現します。「システムエラー404」など一般ユーザーに馴染みのないエラーコードやアプリ独自のエラーコードを表示しないようにします。
ユーザーが問題を的確に判断し、適切に対応できるよう表示することが重要です。
「メールの送信先が存在しません。前の画面に戻って送信先アドレスを再度確認してください」など、次のアクションを提示してあげるとユーザーに優しいです。
10. ヘルプとマニュアルを準備 (Help and documentation)
ヘルプやマニュアルは、ユーザーがわかりやすい場所に提供します。
ヒューリスティック評価を行うメリット
ヒューリスティック評価は、UXデザインにおいて多くのメリットを持っています。主なメリットには次のようなものがあります。
1. 簡単に実施できる
ヒューリスティック評価は、評価者がインタフェースを使用しながら評価することができるため、評価者にとっても、使用者にとっても簡単に実施できます。
外部ユーザーを集めて実施するユーザビリティテストに比べて、時間や費用がかかりません。手軽に実施しやすい分、ユーザーが見ても理解しにくい仕様書の段階や、開発からごく初期のタイミングでも評価が行える。
2. 実践的なアプローチ
ヒューリスティック評価は、実際の使用者がシステムを使用する環境下で実施されることが望ましいが、それができない場合には、評価者が代わりにシステムを使用しながら評価することもできるため、UXデザインにおいて実践的なアプローチをとることができます。
3. デザインの改善点を見つけることができる
ヒューリスティック評価は、UXデザインの最終版に対して実施されるため、デザインの改善点を見つけ、UXの質を向上させることができます。
4. 多くの評価基準を持っている
ヒューリスティック評価には、可用性、学習性、安全性、効率性、反応性など、多くの評価基準があるため、UXデザインにおいて広範囲にわたる評価ができます。
実施にあたって注意点
ヒューリスティック評価で出てきた問題点は、UIUXの専門家による分析であるので、ユーザー目線とは違った問題点となることもあるので、よく理解しておく必要があります。
また、専門家がインタフェースを使用しながら評価するため、専門家によって評価結果が異なります。専門家の知識や主観に左右されることもあることを認識しておく必要があります。
そのため、ヒューリスティック評価で素早くユーザビリティ課題を抽出し、後日ユーザビリティテストを実施して、ユーザーによる操作の結果と組み合わせて調査することでより深みのあるUI改善をすることができます。
また、複数人で実施することも、より詳細な分析をする上で重要です。
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